非弁退職代行業者のリスク
非弁業者(弁護士以外の民間業者)に依頼する一番のリスクは、「全部任せられるわけじゃない」ことでしょう。
ホームページ の「全てお任せ!」は事実ではありません。
業者が会社と交渉すると「違法」になります。
ですから、会社が「退職は認めない」「有給休暇は認められない」「出勤してくれないと困る」「損害が発生する」と言い出したら、そこで業者の出番は終了です。
あとはあなたが直接会社と交渉しなければ、「違法」なのです。
また、ホームページ で「即日退職可能!」とよく見ますよね。
でも即日退職には会社と交渉して、会社に「承諾」してもらう必要があります。
民法627条1項、民法628条を見れば明らかです。
非弁業者は交渉できないのだから、「非弁業者が即日退職させる」はあり得ないのです。
「非弁業者でも即日退職できた!」という人もいると思いますが、それはたまたま会社が騒がなかったから。
退職届を送って、送ったことを伝えて、それ以降交渉しないのであれば、それはいわゆる「蒸発した」「とんだ」状態と同じです。
その様な状態の退職で親切に会社側が
『離職票』
『源泉徴収票』
『社会保険資格喪失証明書』
など、送ってくれるわけもなく。
それに加えて会社から損害賠償請求されれば、支払い義務が生じることもあります。
会社とトラブルになると、非弁業者はあなたに
「労基に相談してください」
「お近くの弁護士に依頼してください」
「民法では退職を伝えてから2週間で退職成立するから大丈夫です」
と言います。
非弁業者は会社と交渉できないし、もちろん裁判もできないからです。
つまり、会社がごねると結局
「自分で会社に頭を下げる」
「弁護士に依頼する」
「労基に足を運び、会社に掛け合ってもらう」※非常に時間がかかります。
ということになってしまいます。
スムーズに退職できそうにないパワハラ体質の会社、気性の荒い代表者の会社などは特に非弁退職代行は避ける方が無難です。
「業者が交渉すると違法」「放置すると損害賠償」「退職書類は自分で労基と連携しての回収」それが「民間業者の退職代行」です。
労働組合型非弁退職代行業者のリスク
簡単に言えば、非弁の民間業者が結成した「労働組合」にあなたが「組合員」として加入し、「労働組合」が会社と交渉して退職代行するという流れです。
しかし、私の調べた限り、「労働組合方式の退職代行」には3つの落とし穴があります。
1つは、「本当に法律上正しい労働組合か」という点です。
「民間業者が労働組合を作れるの?」と私も不思議に思って調べてみたのですが、労働組合法をみると、民間企業が営利目的でつくった「労働組合」は、法律上認められる労働組合とはいえないようです。
最終的には裁判所の判断になるのでしょうが、違法と判断されれば、大きな問題となってしまうリスクがあります。
2つめは、労働組合の「団体交渉」は本来、「あなたと労働組合員」が一緒に会社と交渉するものであることです。
「退職代行用の労働組合」では「私たちが全て行います」と言うようですが、会社が本気で対応してきたときに本当にそれで済むのか、とても疑問です。
3つめは、これもとても大きな問題ですが、「トラブルになれば結局弁護士」ということです。労働組合型の退職代行で会社と交渉したが、会社が「損害賠償だ!」と言って裁判になった場合(私の周りでもいくつか実際にあります)の対応をたずねると、労働組合型の退職代行は
「そもそも損害賠償は絶対にない」
「弊社の顧問弁護士を別料金にて依頼されますか?」
「お近くの弁護士に依頼してください」
その様な回答があるでしょう。
労働組合は裁判対応できないからです。
そこで新たに弁護士費用が追加で5万円ほど発生します。
こちらもあなたの会社がパワハラ体質、気性の荒い代表者の場合は労働組合と名乗る事で、「労働組合なんか我が社にはない!」と、会社に火に油を注ぐことになり
「退職月の給与の支払いがない」
「有休消化、退職金、賞与の支払いがない」
「退職書類が送られない」
などのトラブルになる可能性は非常に高いと思います。
弁護士の退職代行のリスク
弁護士事務所の退職代行は弁護士が対応するため、退職代行に関しては正直リスクはほとんどありません。
ただ同じようにみえる「弁護士の退職代行」でもサービス範囲は同じではありません。
確認するポイントは4つ。
1、基本料金はいくらか
多くは5万円~16万円くらいで、民間より高額のところが多いです。
ただ、3万円ほどで対応してくれる良心的な事務所もあります。
他方、最近は2万円を下回るような非常に安いコースを用意している事務所もあります。
しかし調べてみると、そのような安いコースでは会社に手紙を送るだけなどで、結局自分
で退職手続きを進める必要があり、オプションが有料の場合結局5万円を超えてきたりします。
2、追加料金はないのか
残業代、退職金、未払い分の給与が会社から支払われた場合には、その額から25%~35%
の成功報酬が必要になる弁護士事務所が非常に多く、しかも追加料金を記載しているが非常に見落としやすくなっており、直接問い合わせる事をお勧め致します。追加料金があれば更に高額になることがあります。
中には追加料金が特に不要な事務所もあるようですので、きちんと調べる必要があります。
3、裁判になったら対応してくれるのか(費用も)
裁判になったときは通常の弁護士費用を請求されることもあります。
ただ、裁判費用の追加が必要ないコースを用意してくれている事務所もあるようです。
4、土日、深夜など急な問い合わせに対応をしてくれるか
急に明日から職場に行きたくないなどの急な対応に対してはほとんどの弁護士事務所は対応していません。
問い合わせに対しての返信も翌日になる事務所もかなりあります。
中には24時間対応している弁護士事務所もあるので、サイト内の各社データを参照してください。